東京駅から新幹線つばさ号で2時間強。米沢市は山形県の南端で内陸の盆地に広がる、人口約8万人の城下町。ブランド和牛の生産や、江戸時代の名君である上杉鷹山でよく知られる。駅弁は明治時代からの駅弁屋と戦後昭和の駅弁屋が激しく競い、無数の牛肉弁当があることになっている。1899(明治32)年5月15日開業、山形県米沢市駅前1丁目。
2020(令和2)年9月までの発売は、同年10月からのJR東日本の駅弁キャンペーン「駅弁味の陣2020」へのエントリーに向けたものか。長方形のプラ容器に白飯を詰め、牛焼肉と牛肉煮で覆い、玉こんにゃく、玉子焼、柴漬けを添える内容は、今までの米沢駅弁と変わらない。今回は牛焼肉に山形牛カルビ、牛肉煮に米沢牛を使い、ひとつの弁当で県内のブランド牛を対決させた。高価であるも、常温でおいしい牛肉。価格は2020年の発売時や購入時で1,480円、2023年時点で1,490円。
※2023年5月補訂:値上げを追記2001(平成13)年4月に発売。フルカラー写真を掲載した豪華なボール紙製のパッケージの中に、木目を印刷した発泡スチロール製の長方形の容器が入り、牛サイコロステーキを4個串刺しにした牛串が2本、白御飯の上に載る。160gも使ったという肉の風味を引き立てるタレに、常温なのに口の中で溶けてゆく食感。付け合わせの大切りのゴボウも負けてはいない。冷蔵でも悪くない味。価格は2005年の購入時で1,000円、2010年時点で1,100円、2014年時点で1,150円。
※2017年8月補訂:値上げを追記2003(平成15)年の秋に発売。白い円形の加熱機能付き容器を、焼肉の写真を載せた賑やかなボール紙のパッケージに入れる。中身はとてもシンプルで、薄く敷いた御飯の上に牛カルビ肉を載せるだけ。ひもを引いて暖めると確かに、タレと脂身に支えられたカルビ焼肉の風味が出て、分量のある牛肉は柔らかく、御飯が足りなくなる感じ。価格は2004年の購入時で1,000円、2010年時点で1,100円、2014年時点で1,150円、2017年時点で1,200円、2020年時点で1,300円、2021年時点で1,150円、2022年時点で1,250円、2023年時点で1,280円。
※2023年8月補訂:値上げを追記2021(令和3)年1月の阪神百貨店の駅弁大会で実演販売。白飯を厚切り牛たん6枚で覆い、ニンジン、笹かまぼこ、しそ巻き、大根漬を添える内容は、昨今で一般的な牛たん弁当。付合せの内容を含め、山形や米沢でなく、宮城や仙台の要素でできている。この駅弁大会でのみ売られた模様。
秋冬の駅弁大会シーズンに向けた、2018(平成30)年秋の新商品か。掛紙には「七代目松川」や「百十余年伝統の味」のキャッチが目立つ。中身は白飯+牛肉+付合せという、牛肉駅弁で定番の構成。牛肉煮に加えて斜めに5個配置した牛角切りステーキは、焼き鳥大で弾力があり、常温の弁当で食べやすいものになっていた。2022年までの設定か。
※2023年4月補訂:終売を追記2017(平成29)年の春までには発売の模様。長方形の加熱機能付き容器の、左半分に白飯を詰め、右半分にビフテキとフォアグラ、つまり牛ステーキとフォアグラ焼と、カリフラワー、 ニンジン、カボチャ、スパゲティ、トマト、芋の揚げ物、パプリカを詰める。具の多様と分量で、加熱機能付き駅弁らしからぬ弁当感があり、ステーキもフォアグラも香りと食感が感じられる量が確保されていた。東京以外で買えるかどうかは、わからない。1年間ほどの販売か。
※2023年8月補訂:終売を追記2017(平成29)年12月に東京駅や上野駅で販売、翌2018(平成30)年1月に京王百貨店の駅弁大会で販売。円形の加熱機能付き容器に、レンコンやパプリカも入る牛ステーキ丼と、ニンジンやゴボウなどの煮物も入る牛すきやき丼と、漬物を詰める。加熱機能付き駅弁のイメージを覆す白飯の多さで、分量は十分。2019年までの販売、2021年までの掲載か。
※2022年4月補訂:終売を追記2017(平成29)年9月12日に、スーパー大手「イトーヨーカドー」の駅弁空弁フェアでデビューか。翌月からのJR東日本の駅弁キャンペーン「駅弁味の陣2017」にエントリー。中身はパッケージの写真のとおり、上段に6種12切れの牛焼肉を、下段に御飯と煮玉子とナムルと漬物を詰める。
牛焼肉の内訳は、添付のしおりに書かれるとおり、「赤身肉(塩・胡椒)」「サイコロ(塩・胡椒)」「カルビ(塩・胡椒)」「タン(塩・胡椒)」「カルビ(西京風味噌ダレ」「ハラミ(塩・胡椒)」。これらが焼肉の姿のまま、6区画に2個ずつ収まる仕様。常温と高価格が気にならなければ、これはおもしろいつくり。2018年までの販売か。
※2019年8月補訂:終売を追記2014(平成26)年4月の発売か。駅弁の名前のとおり、そしてパッケージの写真のとおり、丼に白御飯を敷き、牛ハラミ肉のサイコロステーキとカットステーキ、タマネギ炒め、スクランブルエッグ、ダイコン酢漬けで覆う牛肉丼。冷たいのに柔らかくかみ切れる牛焼肉の味を、タマゴとタマネギがうまく補佐する。
この駅弁はスーパーやデパートとNREの駅弁大会でのみ取り扱われる模様。米沢駅の牛肉駅弁は、東京駅へ行けばなんでも買える。価格は2015年1月の購入時で1,150円、2015年秋の時点で1,200円。2017年までの販売か。
※2019年8月補訂:終売を追記秋冬の駅弁大会シーズンに向けた、2009(平成21)年秋の新商品か。長方形で黒塗りの赤い容器に透明なふたをして、商品名と牛タン焼肉の写真を書いた掛紙を巻き、ゴムで留める。中身は白御飯の上に牛タンの塩焼きを貼り付けて、玉子焼や煮物類や柴漬けを添えるもの。付合せの味付けが濃厚すぎて箸休めの役目を果たしていないが、適度な分量と固さと味付けを持つ牛たん塩焼きが御飯に合う。
しかし「炭火焼き牛たん弁当」と読める商品名は、牛たん弁当を有名にした仙台駅弁とまったく同じ。こちらは加熱機能付き容器でないが、これはどうなのだろう。2011年までに「網焼き牛たん弁当」と改称し、これもまた仙台駅弁と同じ。価格は2010年の購入時で950円、2012年時点で1,050円、2014年時点で1,100円、2019年時点で1,150円、2022年時点で1,200円。2022年までの設定か。
※2023年4月補訂:値上げなどを追記同じ調製元の「米澤牛焼肉重松川辨當」と同じく、2008(平成20)年に大宮駅限定の駅弁として発売した模様。駅弁催事では米沢の駅弁として紹介され販売されている。小柄な長方形の発泡材容器に透明なふたをかけて割りばしを置き、コンサルタントが好んで作りそうな宣伝文を書き記したボール紙の枠にはめる。中身は白御飯の上に牛肉煮を敷き詰めて白ゴマをまぶし、煮物数点と玉子焼と柴漬けを添えるもの。
牛肉の味付けが生姜と醤油なのだそうだが、この調製元の他の牛丼駅弁に比べて、やっぱり間違い探しの範囲でしか違わない。味もその点では良好。こういうことをしないと、あるいはさせられないと、東京に見向きもされなくなってしまうしまうという危機感か、地元を離れて東京へ進出し成功したいという野心か、普通の駅弁屋にはあまり見られない背景を想像してしまう商品だと感じた。価格は2009年の購入時で1,050円、2017年時点で1,150円、2020年時点で1,200円。2019年頃までの販売か。
※2021年3月補訂:終売を追記2008年10月12・13日の両日に東京駅構内で開催された「東日本縦断駅弁大会−秋−」で販売されたお弁当で、全8種が誕生した「メガ駅弁」のひとつ。木目調の発泡材製の大きな円形の容器に同柄のふたをして、商品名や売り文句を力強く書いた掛紙をかけて、ひもで十字にしばる。中身は山に盛った白御飯の裾野に、牛焼肉、牛すき焼き、牛角煮、牛そぼろを放射状に配置して牛肉だんごを置き、頂上に煮玉子を載せるもの。
分量が通常版の1.5倍というが、米沢駅弁にこれと一致する商品はない。しかし中身は調製元の米沢駅弁に入っているものの詰合せであり、味も当然に同じ。容器の容積に比して控えめの御飯と盛りすぎの牛肉で大盛を演出していた、価格を考えても大満足の牛づくし。米沢駅や山形新幹線車内販売でレギュラー入りすれば、ライバルの「牛肉どまん中」に話題性で対抗できそうだと思う。
山形新幹線の開業15周年を記念して2007(平成19)年7月に発売した期間限定駅弁とされるが、その前から売られていた模様。長方形のトレー接着容器に黒いふたをして、駅弁の名前と中身の写真や宣伝文句を印刷して山形新幹線15周年シールを貼ったボール紙の枠にはめる。中身は白御飯の上に牛肉うま煮、薄切りの牛肉チャーシュー、牛豚合挽ウインナーを載せ、ごぼうと高菜と味噌しそ巻を添えるもの。
米沢でも全国でも牛丼か牛焼肉が定番の牛肉駅弁において、この内容は個性的。肉の薄さと柔らかさと脂の豊かさが御飯に合い、添付の尾花沢産スイカおろしだれをかけるとみずみずしさも出る。駅売りでも新幹線車内販売でもライバル業者の偉大な「牛肉どまん中」に隠れているが、偶然にこれを選んだ旅客からは絶賛される風味で、知名度を得れば対抗馬になり得る存在。2008年まで売られた模様。
新幹線と在来線はレールの間隔が異なるため直通運転ができない。そこで1992年7月、奥羽本線福島〜山形間のレール間隔を新幹線に合わせて、東京からの直通特急を運転できるようにした。つまり新幹線を建設したわけではないが、愛称の公募で「山形新幹線」が採用されたため、新幹線なのに踏切があるとかスピードが遅いとか電車が小さいとか、誤解や混乱が生じることがある。役所はこれをミニ新幹線と呼んで、普通の新幹線と区別する。
※2016年11月補訂:終売を追記木目調の小さな容器に、商品名を書いた掛紙を巻く。真空パックになっている中身は、固結した棒状御飯に味付牛肉を貼り付けたもの。以前に買った「松茸入牛肉弁当」は不味かったが、こちらは牛肉のカルビ焼肉っぽい味が良好と感じた。しかし列車内で食べるものではない土産品であることは確かだろう。発売年も終売年も不詳。
※2017年8月補訂:終売を追記2000(平成12)年の発売か。「牛」と「べこ」は同じものを指すと思うが、商品名の語感は悪くない。円形の加熱機能付き容器を、底面以外は文字だらけのボール紙製パッケージに詰める。中身は白御飯の上に牛角煮スライスやごぼうや舞茸やニンジンなどが、タレで濃く染まり同じような色になりながら載る。
ヒモを引いてから食べるまでの時間が短かったか、熱が肉まで回っていなかったが、常温で食べてもアツアツと変わらなそうな味。最近の駅弁催事で大きな顔をする加熱式米沢駅弁の中でも比較的初期に出たはずなので、常温で味を生かす駅弁屋の技術をベースに作られたのではと思う。2016年時点で現存不詳だったが、2021年時点で要予約商品として調製元が公式サイトに掲載。2021年春に廃盤か。
※2022年4月補訂:終売を追記米沢駅の牛たん弁当の、松川弁当店版。小判型の容器をオレンジ色のスリーブに収める。中身は白御飯の上に牛たんの味噌焼を貼り、様々な漬物を添えるもの。牛たんの見た目と味は、人気で有名な仙台駅の駅弁よりも野暮ったい感じ。見栄えがするパッケージの記述「美味舌賛」「二枚舌」に、洒落っけが効く。2007年頃までの販売か。
※2017年8月補訂:終売を追記ボール紙の立体パッケージに小さな長方形の木目調容器を入れる。中身は酢飯の上に赤い紅花と黄色い吾妻菊と青いうこぎを信号機の順番で混ぜた柔らかな牛肉の板が載るもの。ステーキでも焼肉でもミンチでもない肉は不思議な食感で、少なくとも他の米沢駅牛肉駅弁よりはかなりあっさりしている。2005年頃までの販売か。
「うこぎ」とはウコギ科の植物で、トゲを利用した防犯用と食用を兼ねて米沢地区では鷹山公により垣根にすることが推奨されていたとか。一応、地域の名産品として挙げられるが、米沢のABCと役所が呼ぶリンゴ・牛・鯉など他の名産品に隠れて、知名度は無に近い感じ。
2002(平成14)年の秋に発売。真っ黒な牛顔型樹脂製容器に、お札のように掛紙代わりのボール紙を巻く。ふたを開けると「花笠音頭」の電子音が流れてメロディセンサーの注意書きが登場、それを取ると、白御飯の上に牛角煮を8個載せてゴボウなどを添える中身が出てくる。中身はいわば「牛串弁当」から串を外したものなので、味は同等、胃腸に重量感のあるヘビーな駅弁だ。容器は三重県の松阪駅「松阪牛モー太郎弁当」との共同プロデュース。価格は2003年の購入時で1,150円、2010年時点で1,250円、2014年時点で1,300円。2022年までの販売か。
※2023年4月補訂:終売を追記広告が過度な感があるボール紙製パッケージにプラスティック製釜型容器を収める。上で紹介した「牛串弁当」に使われる牛肉の角切りを、大切りのタケノコやゴボウや人参の煮物とともに御飯の上に載せたもの。御飯を減らしおかずを増やすのは数十年来の弁当の流れだが、この駅弁はそれにも増して少量の御飯と大量の具という組み合わせで、たっぷり入れられた牛肉により実際の分量の割には腹に響く食べ応えのある駅弁。価格は2003年の購入時で1,000円、2010年時点で1,050円、2014年時点で1,100円。2017年までの販売か。
※2023年8月補訂:終売を追記2008(平成20)年3月1日に釧路、八戸、米沢、都城の4種が誕生した駅弁屋の監修によるレトルト弁当の派生商品として、米沢と都城の2種で出た瓶詰め。甘辛く煮た牛フレークが詰まった瓶を、レトルト弁当と意匠を合わせたのボール紙の枠にはめる。食べればなるほど、米沢駅弁の味。
上記の商品「駅弁屋さんの牛そぼろ」の、2021年時点での姿。都城などのバージョンはすでになく、他の版や新作が出るわけでもなく、この米沢のみが十数年も売られ続ける息の長い商品となっている。スリーブはなくなり、分量は65グラムから55グラムに減らされステルス値上げとなったが、中身は変わらない。話題にならないが、ネットでも買える。価格は失念したが300円台か。