東京駅から新幹線ひかり号で約1時間半。豊橋市は愛知県の南東部で三河湾と遠州灘に面する、人口約37万人の城下町。野菜や果樹などの農産や、ちくわやゼリーなどの食品産業がさかん。駅弁は豊橋駅の開業とともにある駅弁屋の壷屋弁当部が健在で、ここの稲荷寿しは名物である。1888(明治21)年9月1日開業、愛知県豊橋市花田町西宿。
明治時代の末期に発売。かつて全国各地ほぼすべての駅弁屋が手掛けた稲荷寿司の中で、古くから日本一うまいと評価されることの多い、豊橋駅弁のいなりずし。掛紙の絵柄は何十年も変わらない、おそらく豊川稲荷の本殿と鳥居にキツネの像。素材こそ紙やプラだが、大きさは昔の経木折と変わらなそうな容器に、少し細身で少し茶色の濃いおいなりさんを7個収め、紅生姜の袋を添える。約20分間熱湯で油抜きをした油揚げを、醤油と砂糖のタレで約40分間煮て、酢飯を詰めて作られるという。
※2019年8月補訂:写真を更新2017(平成29)年1月29日に購入した、豊橋駅弁の掛紙。上記の2018年のものと同じ。下記の2003年のものとも、ほぼ同じ。法令で義務づけられた表示を除き、今後もおそらく変わらないだろう。これは大阪の阪神百貨店の駅弁大会で購入。豊橋駅の駅弁が現地以外で売られるのは珍しく、ここではだいたい人気のブースとなっている。価格は2003年当時で450円、後に480円、2012年10月から500円、2014年4月の消費税率改定で520円、2019年時点で550円。
2003(平成15)年1月3日に購入した、豊橋駅弁の掛紙。昔も今も変わらない。それでいて、必要な法的表示や調製元の所在地など、必要なアップデートはされている。
1973(昭和48)年10月26日の調製と思われる、昔の豊橋駅弁の掛紙。絵柄は過去も現在も同じで、これは色彩も21世紀のものと変わらない。だから古物としての価値が上がらない。
1950年代のものと思われる、昔の豊橋駅弁の掛紙。とはいえそこは伝統の稲荷寿司、現在の掛紙とデザインはほぼ同一。左隅の注意書きは一字一句変わらない。
2019(平成31)年1月の阪神百貨店の駅弁大会で実演販売。この催事に関係する催事業者の「新作実演駅弁グランプリ」対象品で、すると過去の事例から実際に駅で売られるかどうか疑問だと思うし、実際に他での販売を確認できない。中身は見た目で豊橋駅の名物駅弁「稲荷寿し」と同じく、稲荷寿司が7個。食べれば少しだけ黒糖の香りがあり、通常版より小さな掛紙を巻いていた。
2022(令和4)年1月の京王百貨店の駅弁大会で実演販売。中身は上記の2019年のものと同じ、黒糖風味の稲荷寿司が7個。掛紙は豊橋駅で伝統の駅弁「稲荷寿し」と同じものを使用した。価格は50円アップの800円。引き続き、催事場での実演販売でのみ買える商品だと思われる。
2010(平成22)年9月に発売。調製元と豊橋名産ヤマサのちくわのコラボ商品で、オレンジ色の掛紙には両社の社章も描かれる。中身は稲荷寿司が5個と、ちくわの細巻きが3個。口を開けた3個の稲荷寿司の具はそれぞれ、梅肉を詰めたちくわと大葉、ちくわと大葉の磯辺揚げ、うずらの卵とヤマサの練物。掛紙によると豊橋は日本一の大葉とうずら卵の産地だそうで、これらも中身に取り入れられている。価格は2017年の購入時で650円、2019年時点で680円。
2001(平成13)年に発売。豊橋駅弁で名物の稲荷寿司の別バージョン。通常版と同じ絵柄を使う掛紙に記すとおり、7個の稲荷寿司がじゃこ2個、いなり3個、わさび2個で三色になっている。価格は2017年の購入時で590円、2019年時点で620円。
※2019年8月補訂:写真を更新し値上げを追記豊橋駅で古くから売られていると思われる助六寿司駅弁。ここの名物駅弁「稲荷寿し」と同じ容器に、同じ稲荷寿司を4個と、かんぴょうの細巻きを5個詰めている。今では駅弁として貴重な存在だと思う、何の飾りも変化もない助六で、稲荷寿司と細巻きのセット。
※2019年8月補訂:写真を更新し値上げを追記2001(平成13)年1月1日に購入した、昔の豊橋駅弁の掛紙。食品表示の表記の差異などはあるが、上記の2019年のものと変わらない。助六寿司など駅弁にしなくてもコンビニや持ち帰り寿司チェーンで充分、と思う人が多いためか、今や東海道新幹線沿線を除き、駅弁としてはほぼ絶滅してしまった感がある。
2004(平成16)年の発売。豊橋駅弁の季節の稲荷寿司の春バージョン。稲荷寿司が7個入るのは通常版と同じで、そのうち3個は通常の稲荷寿し、口を開けて中身を見せる4個の具がそれぞれ、あなご、タケノコと菜の花、刻み梅と酢れんこん、アサリと錦糸卵となっている。通常版の美味を、ちょっと色付け。
2004(平成16)年の発売。豊橋駅弁の季節の稲荷寿司の冬バージョン。稲荷寿司が7個入るのは通常版と同じで、そのうち3個は通常の稲荷寿し、口を開けて中身を見せる4個の具がそれぞれ、野沢菜、カニ、黒豆と酢れんこん、ホタテと錦糸卵となっている。この頃には阪神百貨店の駅弁大会で行列の人気ブースとなっていた。数年前は閑古鳥だったのに、何が起きたのか。価格は2017年の購入時で700円、翌年の阪神百貨店の駅弁大会では756円だった。
1989(平成元)年9月1日に500円で発売。JR東海の駅弁キャンペーン「新幹線グルメ」の一環で、この日に東京駅を除く東海道新幹線「こだま」停車駅15駅で、500円の「ミニグルメ」「おつまみグルメ」「ティータイムグルメ」各16種(名古屋駅は調製元2社で各1種)が一斉に発売された駅弁のうち、豊橋駅の「ミニグルメ」にあたるもの。掛紙に記される「ちょっぴり食べたいミニグルメ」は、そのキャッチフレーズである。調製元は「自慢の稲荷ずしと海老ずし、おかずも揃ってちょっぴり食べたい方や女性の方にぴったりです。」と紹介した。
竹皮柄のボール紙を組み立てて、いなりずし2個、酢エビの握り寿司2個、カニクリームコロッケ、鶏唐揚、しめじ天、枝豆、生姜を詰めるという不思議な中身。中身をこのような組合せにした理由を聞きたい気がした。発売当時の記事を除き、メディアでの紹介例や、買った食べたという報告はほとんどないと思う。価格は2014年の購入時で570円、2019年時点で600円。
※2021年3月補訂:発売年月日と新幹線グルメを追記豊橋駅弁の助六寿司。これは埼玉県川越の駅弁大会での実演販売で購入。中身は稲荷寿司3個と太巻き4個で、食品表示「あなご助六」のとおり、太巻きの具にアナゴがかんぴょう、玉子焼、えびそぼろとともに入っており、柔らかアナゴ煮の食感と香りがしっかり。昭和なデザインの掛紙は、現地でも使われているだろうか。
取扱種類数では日本一の駅弁催事である、阪神百貨店の駅弁大会で見付けた実演販売品。名駅弁「稲荷寿し」の掛紙と同じ柄を描く耐水紙製容器に、おいなりさんが6個。うち2個が通常版、2個がアサリ入り、2個がウナギ入り。
これを200円引きタイムサービスで販売していたが、残念ながらブース前は閑古鳥。ここの駅弁屋は鰻重にも定評があることを知る人は、催事場に何人いただろうか。爪を隠しすぎている印象だった。
豊橋の、駅弁でない稲荷寿司。ボール紙の箱に収められた経木折に五目稲荷が7個。出来立ての実演販売なので風味は良好、醤油色にどす黒い外観に警戒すると、風味は逆に軽く柔らかく、名物と名乗るだけのことはある。「いなほ寿し」そのものは名物でもなんでもないと思うが、稲荷寿司発祥の地と言われる豊橋稲荷の門前で売られるとなれば、これは名物だ。
2024(令和6)年1月の京王百貨店の駅弁大会で販売した企画商品。全国を6地域に分け、各地域の駅弁を4マスに詰めた駅弁を、実演で販売した。会期の前半は「北陸編」「中部編」「九州編」の3種を、後半は「北海道編」「東北・関東編」「関西・中国編」の3種を販売。会場ではもしかすると一番人気のブースになり、行列ができて毎日売り切れていた。
この中部編は、岐阜県の高山駅「飛騨牛しぐれ寿司」と、愛知県の名古屋駅「松浦の味噌ヒレカツ重」と、山梨県の小淵沢駅「甲州かつサンド」と、愛知県の豊橋駅「稲荷寿し」の詰合せ。大きな掛紙には、その4種類の駅弁の掛紙の一部や縮小版をタイル状に組み合わせた。中身も正方形の4区画で、それぞれの御飯の部分を詰合せ。味も当然に、それらと同じ。各駅弁は黒いプラ製トレーに詰めたが、稲荷寿しに限って円形のくぼみに収めた。
昭和40年代のものと思われる、昔の豊橋駅弁の掛紙。助六なのに海老が描かれるのは変な感じだが、仕出し料理ならば違和感がないので、そういうセンスなのだろう。