東京駅から新幹線で3時間強。姫路市は兵庫県の南西部で瀬戸内海に面する、人口約53万人の城下町。製鉄や液晶などの臨海工業で栄え、国宝で世界遺産の姫路城が観光客を集める。駅弁は明治時代からの駅弁屋「まねき食品」が、アナゴや姫路城などの駅弁を販売。1888(明治21)年12月23日開業、兵庫県姫路市駅前町御殿前。
1974(昭和49)年頃に姫路駅で発売。20年以上前からこの駅弁に使われる絵柄に姫路城を描いたスリーブに収めた、楕円形の容器にだし飯を詰め、錦糸卵で覆い、刻み海苔を仕込み、煮穴子を並べ、焼穴子、しいたけ煮、奈良漬、紅生姜で彩り、キャベツの煮浸し、こんにゃく煮、にんじん煮、きんぴらごぼうを添える。
メインの穴子は少なくても柔らかく、だし飯とともに味と香りを付与する、アナゴを量や味や味付けでなく雰囲気で味わう印象。同じ駅で売られる、穴子の量で攻める「名代あなご寿司」や、シンプルさと高級感を持つ後身「たけだの穴子めし」とは、役割が分担されている。
価格は2001年の購入時で920円、2010年時点で980円、2014年時点で1,000円、2022年時点で1,080円、2024年時点で1,180円。
※2024年8月補訂:写真を更新し解説文を手直し2001(平成13)年12月30日に購入した、姫路駅弁のふた。当時は楕円形の容器をラップで包んでおり、絵柄はふたに直接印刷され、アナゴの隣に鳥そぼろと山菜が配置されていた。東京発の夜行列車「サンライズ出雲」を姫路駅で降りたのは朝5時半で、駅とその周辺に開いている店がひとつもなかったのに、駅弁屋は開いており、このような駅弁を買えたことが印象的だった。
姫路駅の駅弁屋が2020(令和2)年8月7日に、姫路駅前にオープンした穴子飯専門店「たけだの穴子めし」で販売する持ち帰り弁当。税別1,650円のこれと、税別1,200円の(小)のみの販売で、営業を開始した。新作なのにとても古めかしい、歴史と伝統がありそうな姿をしている。
四角い容器に、兵庫米きぬむすめを使う穴子だし飯を詰め、煮穴子で覆い、奈良漬と柴漬けと生姜を添える。アナゴは柔らかくも固くもない、かまぼこのような弾力感。「たけだ」は、1888(明治21)年に調製元を創業し、現在は6代目の竹田家にちなむものだと思われる。価格は発売時や2021年の購入時で1,782円、2022年時点で1,998円。
※2023年1月補訂:値上げを追記上記の駅弁「たけだの穴子めし」の(小)タイプ。四角い容器に穴子だし飯を詰め、煮穴子で覆い、奈良漬と柴漬けと生姜を添える内容は同じで、穴子の分量が異なる。味も同じ。2022年3月に大阪梅田の阪神百貨店にも弁当専門店「たけだの穴子めし」が開店し、これが買えるようになった。姫路駅弁の一部も販売。「えきそば」はもとから、そのエリアに出店している。
上記の駅弁「たけだの穴子めし」の「巻にぎり」セット。食品表示ラベルでの商品名は「たけだの穴子巻と煮穴子にぎりセット」。その名のとおり、上記の(小)と同じ掛紙で包んだ同じ容器に、煮穴子にぎりが3個と、焼穴子に玉子焼や椎茸などを合わせた太巻きが4個。淡く柔らかい風味と、容赦ないお値段。
2020(令和4)年1月の京王百貨店や阪神百貨店の駅弁大会で発売。長方形の容器2区画にだし飯を詰め、一方を但馬牛とごぼうの煮物、タマネギ炒め、こんにゃく、ひらたけで覆い、他方を焼穴子、椎茸煮の刻み、小松菜漬、大根甘酢で覆う。つまり小さな牛丼とアナゴ丼が半分ずつ。牛肉でも穴子でもない具と味が強めなのは、邪魔なのか変化なのか。
2022(令和4)年4月10日から5月31日まで、姫路、新神戸、新大阪、大阪、京都、東京、大宮の各駅で販売。駅弁の日に合わせ、日本鉄道構内営業中央会の会員のうち21社が、FMヨコハマのラジオ番組「FUTURESCAPE」とタイアップし、この年の4月10日から各社の駅売店などで販売した、駅弁の日記念のおにぎり駅弁の、姫路駅バージョンとして販売。今回のキャンペーンで各社に用意された「駅弁カード」が1枚付いてきた。
浅く平たいプラ容器に、白い姫路城が青空にまぶしい絵柄の掛紙を巻く。中身は三角柱の側部を海苔で巻いた、但馬牛煮と、焼穴子でなくシイタケ煮のおむすびが各1個に、つくね団子、ふきとニンジンの煮物、玉子焼、あさり佃煮、紅白なます、焼サワラ、焼アナゴなど。おにぎり、おむすびの記念駅弁なのに、その主役だけが情けない姿をしていて、おにぎり弁当らしからぬ充実したおかずでカバー。日本鉄道構内営業中央会の見本写真では、焼穴子おにぎりや倍量の牛肉が載るおにぎりの見栄えがしており、発売1週間で減量したか、これは輸送販売バージョンなのか。
2020(令和2)年9月に「ふるさと兵庫神戸ビーフ焼肉弁当」(1,480円)「香住ガニ極かにめし」(1,580円)「FUJIYAMAGEISYASUKIYAKI弁当」(1,100円)とともに発売。調製元のデザイナーズ駅弁として、姫路出身のイラストレーターで絵本作家のイヌイマサノリ氏がふたの絵柄を描いた駅弁が、今期の新作としてまずはドライブスルー店で販売された。
アナゴを描くふたの絵柄は、駅弁の掛紙というよりはむしろ絵本の表紙。中身は白飯を焼きアナゴで覆い、ごま昆布のみを添える、古めのアナゴ駅弁で定番のつくり。焼きアナゴというよりはむしろ、煮魚の味を持っていた。
1959(昭和34)年に発売し、昭和50年代に現在の姿へ変更。細長いボール紙の容器の中に細長い穴子寿司が横たわる。椎茸と山椒の煮物を入れた、ほんのり酸っぱい酢飯と香ばしいタレと軽くお焦げが付くまでしっかり焼いた穴子蒲焼が口の中でぴったり合う。購入時は高く感じる価格にも納得。価格は2001年12月の購入時で1,200円、2010年時点で1,300円、2014年時点で1,350円、今回2017年1月の購入時で1,800円。
※2018年1月補訂:写真を更新2012(平成24)年8月9日の東京駅構内での駅弁売店「駅弁屋 祭」のオープンに伴い、この売店で発売か。パッケージは姫路駅弁のまねき食品であるが、オープン記念の駅弁大会での目玉商品扱いでの実演販売のためか、この駅弁の食品表示ラベル上の調製元は日本レストランエンタプライズ(NRE)になっている。
各地の駅弁でおなじみの発泡材枠な長方形の容器に、白御飯を詰めて刻み海苔を振り錦糸卵をまぶし、その上に焼きアナゴを並べて刻みアナゴも添えて紅ショウガを置き、菜の花ゴマ和えときんぴらごぼうを付け合わせる。東京での、駅弁売店の中の小さな実演販売ブースでの調製は制約がとても大きかったのだろう、焼きアナゴはアッサリし過ぎて、分量も非常に物足りなく、それでいてこの価格。姫路駅のアナゴ駅弁はこんなものではない。以後もどうも東京駅限定の姫路駅弁として売られる模様。価格は発売時や購入時で1,100円、2020年時点で1,180円。
※2020年6月補訂:値上げを追記2022(令和4)年1月の京王百貨店の駅弁大会で、仙台駅の伊達政宗、新潟駅の上杉謙信、加賀温泉駅の前田利家、甲府駅の武田信玄、豊橋駅の徳川家康、名古屋駅の織田信長、城崎温泉駅の明智光秀、姫路駅の黒田官兵衛、広島駅の毛利元就、出水駅の島津義弘の10種類が各1,500円で一斉に発売、同月の阪神百貨店の駅弁大会でも販売。約20年前の疑義駅弁である日本古窯弁当シリーズと同じく、福井県の催事業者がプロデュースし、各地の駅弁業者が調製し、大規模な駅弁大会で販売する、各地の駅弁を名乗るが現地の駅では買えない商品だと思われる。調製元や鉄道会社などは、この駅弁とその発売に何も触れていない。3月まで催事でのみ販売か。
今回は黒いプラ容器が円錐状とボウル状で2種類あり、この黒田官兵衛はボウル状のもの。これに黒田家の家紋を入れ、日本古窯弁当と同じ半透明のふたをして、今回のシリーズで共通のしおりを置き、それらしき絵柄のスリーブで留める。中身は白飯を煮アナゴとその刻み、ひょうたん、玉子焼、刻み海苔、城型にんじんで覆うもの。味は定評のある姫路駅弁のアナゴと同じく、煮アナゴの柔らかさに焼アナゴの香りを付けたようなうまさ。黒田官兵衛の中国大返しをイメージしたお弁当なのだという。丸一日の日持ちがする弁当としてはよいと思う。
黒田官兵衛(くろだかんべえ)は、現在の姫路に生まれ九州は福岡の藩主となった戦国時代の武将である黒田孝高(くろだ よしたか)のこと。後に戦国の三英傑と呼ばれる織田信長、豊臣秀吉、徳川家康に重用された天才の軍師で、2014年のNHK大河ドラマ「軍師官兵衛」の主人公になり今の世で知名度を高めた。中国大返し(ちゅうごくおおがえし)とは、戦国時代の天正10年6月(1582年6〜7月)に、現在の岡山県岡山市の備中高松城で毛利軍と戦っていた織田軍の羽柴秀吉、後の豊臣秀吉が、明智光秀が織田信長を討ち滅ぼしたことを知ると、現在の京都府大山崎まで今でいう約230kmを移動し、山崎の戦いで光秀を討った、黒田孝高も参加した約10日間の軍事行動。駅弁(ではないかもしれないが)に対して、ずいぶんと大仰な名前を付けたものだと思う。
※2023年7月補訂:終売を追記2021(令和3)年1月の京王百貨店の駅弁大会での実演販売で発売。漫画作品「新・駅弁ひとり旅」とのタイアップ商品であり、スリーブには中身の写真とともにそのキャラクターが描かれる。中身は白飯に焼きアナゴを少々載せ、イクラを多めにかけて、玉子焼とレンコンと生姜を添える。視覚と味覚が一致する。アナゴとイクラは、合うのかどうか。2022年1月の京王百貨店の駅弁大会でも販売。その各2週間のみの販売か。
※2023年7月補訂:終売を追記2020(令和2)年1月の京王百貨店の駅弁大会で実演販売。前年の「四味」が、今年はひとつ増えて「五味」に。真ん丸のボール紙製容器は、外側も内側も金色に輝く。これにまねきのえきそばの出汁で炊いた御飯を詰め、アナゴの酒蒸し、アナゴの炙り煮、アナゴの刻みたれ和え、アナゴの炭焼風、アナゴの醤油焼を載せ、すき間を山菜と小松菜と大根漬で埋める。
五輪の金メダルとは言われていない。催事場では前年の四味穴子重と同じく、味が散漫だったのかお客さんがいない。五色でない「名代あなご寿司」や、過去にここで人気だった柑橘系の鯛寿司のほうが、客を呼べたかもしれなかった。2020年の東京五輪が2021年に延期されたからか、秋からのスーパーの駅弁催事で再登板している模様。五輪を待たず2020年内に終売か。
※2022年4月補訂:終売を追記2019(平成31)年1月の京王百貨店の駅弁大会での実演販売でデビューか。同催事の目玉企画「四味食べ比べ対決!」で、米沢駅「味くらべ牛肉どまん中」や稚内駅「食べくらべ四大かにめし」と実演販売で販売個数を対決した。姫路駅の駅弁でもよく使われるアナゴについて、酒蒸し穴子のあなご飯、焼穴子のちらし寿司、炙り煮穴子のあなご飯、刻み焼穴子のいなり寿司で4種の味にして、4区画の容器に詰めた。とはいえ、個々のアナゴが少量なので、味の違いはとくになし。全体のアナゴも少量なので、姫路駅弁ならば「名代あなご寿司」などの棒寿司や、味がひとつのアナゴ駅弁のほうが良いかと思った。2022年までの販売か。
※2023年7月補訂:終売を追記2018(平成30)年1月の京王百貨店の駅弁大会で実演販売。そのために用意した新商品だろうが、掛紙に「創業130周年記念弁当」とあるとおり、調製元の創業周年記念商品にも見える。今までのこの百貨店のこの会場のこの催事で実演販売された駅弁「穴子かさね重」の、別バージョンのような感じ。
中身はアナゴ丼と牛丼。それぞれの区画にだし飯を敷き、牛肉煮や煮アナゴを敷き、さらにだし飯を敷いて、牛焼肉とゴボウと小松菜と柴漬け、焼アナゴと玉子焼と山菜とシメジを載せる。食感はいずれも、なかなか固めだった。この京王百貨店の駅弁大会でのみ売られた疑義駅弁だった模様。
※2019年8月補訂:終売と考察を追記2017(平成29)年1月の京王百貨店の駅弁大会でデビューか。目玉の駅弁対決の二番手「海の幸黄金の弁当対決」として、西明石駅、福井駅、京都駅の駅弁と、実演販売で対決した。細長い容器に、アナゴの棒寿司を一本、シイタケ煮を挟んで、8切れにカットして、金粉をふりかけて、タレとワサビとダイコンを添えて、笹の葉の上に置く。中身はつまり、姫路駅弁の隠れた名作「名代あなご寿司」と、だいたい同じもの。今回買ったものは、見た目にふんわり柔らかそうで、食べたらそうでもなし。
京王百貨店の駅弁大会で売り終えた後は、東京駅に時々出没するなど半年間ほど売られた模様。そして2019(令和元)年5月1〜7日、に「令和」の接頭辞を付けて1,800円で一日30個が再登板した。
※2019年8月補訂:現況を追記2015(平成27)年1月8日に京王百貨店の駅弁大会での実演販売でデビュー。現地でも同日に発売。四方からの城の写真を印刷した厚紙を、組み立てて重ねることで姫路城を模す。中身は姫路駅名物「えきそば」で使うだし汁で炊いた御飯に、玉子焼、アナゴ焼、大根漬を折り重ねる。
上げ底と上げ蓋で小さなカップに入る中身は少量で、御飯にはえきそばの味を感じられず、玉子焼はだいぶ甘く、硬めのアナゴは「穴子重」を名乗る量でない。現地のアナゴ駅弁はもっとうまい。確実に催事受けする商品であると思うが、味でも注目度でも、以前の陶器の姫路城のほうが良かったような気がした。年内で終売か。
姫路城の大天守は、2009(平成21)年6月からこの年の2015(平成27)年の3月まで、28億円をかけて「平成の大修理」を実施。前回の1964(昭和39)年完了の「昭和の大修理」から半世紀ぶり。作業のため大天守をまるごと覆った鉄骨の素屋根が2014年6月までに解体されると、異様に白い大天守が出現、城の別名の「白鷺(しらさぎ)城」ならぬ「白すぎ城」だと話題になった。数年もすればカビが生え、元の姿に戻るという。この駅弁はパッケージで、その真っ白な姿を記録した。
※2017年5月補訂:終売を追記2014(平成26)年1月の京王百貨店の駅弁大会と阪神百貨店の駅弁大会でデビューか。上げ底を加えて高さのある容器に、だし飯を詰め、煮アナゴを載せ、その上にまただし飯を詰め、焼アナゴと山菜と漬物を載せる。アナゴの量は面積で、上層で2/3、中層で1/3程度と多くはないが、アナゴを刻んだり焼いたり煮たりしていて、それらの味の変化を楽しめた。価格は2014年の購入時で1,200円、2017年時点で1,240円。2019年までに終売か。
※2020年4月補訂:終売を追記2013(平成25)年1月の京王百貨店の駅弁大会で、姫路駅の駅弁として実演販売されていたお弁当。出汁飯に刻み海苔と錦糸卵を敷き、炭焼き風のアナゴを貼り付け、きんぴらごぼうなどを添えるもの。薄手の焼アナゴは柔らかく上品も、分量が飯にだいぶ負けている。掛紙によると調味料にもこだわったのだろうが、値段にも負けたと思う。そもそもこれは催事専用商品である可能性が高いと思う。姫路駅の本物のアナゴ駅弁はこんなものではない。他の場所で売られたという情報は、目にしていない。
山陽新幹線博多開業30周年を記念して、2005(平成17)年1月23日から9月30日まで販売された、沿線12駅10駅弁業者による「復刻!懐かしの駅弁」シリーズのひとつ。1975年頃に姫路駅で販売されていた400円の穴子寿司を復刻したという。
菱形の経木枠の容器に木目調の紙のふたをかけて、昔も今も将来も姫路名物である姫路城の写真を載せた掛紙で割りばしごと包み、紙ひもで留める。中身は穴子の押寿司というかバッテラを8切れ詰め、蒲鉾と玉子焼きを添える。見た目のままの風味は良好。調製元はこの頃から四辺形の容器が好きだったようだ。
JR西日本にとっては、2004年度「駅弁の達人」に続く駅弁キャンペーンであったが、同年4月25日の福知山線事故による自粛ムードのなか、有耶無耶に終わってしまった。
入手状況から1994(平成6)年10月20日の調製と思われる、昔の姫路駅弁の掛紙の一部。四半世紀後の同じ名前と中身の駅弁に、この文字と絵柄がそのまま使われる。
1982(昭和57)年3月25日12時の調製と思われる、昔の姫路駅弁の掛紙。調製印に製造年がないが、1972(昭和47)年に開業した新幹線新大阪・岡山間の開業10周年のシールが貼られており、これで判断。姫路のアナゴ駅弁は、めしより寿司が優勢だと思う。