東京駅から東北新幹線やまびこ号で約2時間半。一関市(駅名は「一ノ関」で市名は「一関」)は、岩手県の南端に位置し、北上川沿いの北上盆地を中心街とする、人口約11万人の城下町。駅弁は明治時代からの駅弁屋のものが売られ、新幹線改札付近と西口駅舎に駅弁売店がある。1890(明治23)年4月16日開業、岩手県一関市深町。
2023(令和5)年1月の京王百貨店の駅弁大会で実演販売。丸い容器に茶飯を詰め、鮭フレークと玉子そぼろで覆い、焼鮭を載せ、少々のイクラで彩り、れんこん、しいたけ、ふき、大根桜漬を添える。ふんわり柔らかい身に茶飯の風味を加えて、鮭をとてもたっぷり食べている気がした。通路の反対側では新潟駅「鮭ざんまい」を実演販売。各地で2010年代までは鮭よりイクラを増やして輝かせていた鮭駅弁の、これは新たな傾向かもしれない。お値段も駅弁大会の中では控えめでありがたい。
2023(令和5)年1月の京王百貨店の駅弁大会で実演販売。上記の商品「平泉鮭めし丼ぶり」について、京王百貨店駅弁大会限定で、その名を記した特製どんぶりに入れて販売した。2022年の南千歳駅「北海道グルメ豚丼どんぶり」、2021年の小浜駅「御食国(みけつくに)若狭海鮮鯖づけ丼」、2020年の岡山駅「岡山名物デミカツ丼」、2019年の金沢駅「蟹のドリア」、2018年の水戸駅「常陸牛山椒風味カルビ弁当」、2017年の鳥取駅「山陰鳥取かにめし」、2016年の米子駅「海の宝箱丼」、2015年の名古屋駅「抹茶ひつまぶし日本一弁当」と同じ。過去のように買うのに開店ダッシュが必要な商品でもなし、事前のネット予約も難なく、しかし午後か夕方には予定数がちゃんと売り切れていた、そこそこの人気。催事場ではこれが売り切れないと、通常版が買えなかった。
2020(令和2)年の夏に発売か。同年秋のJR東日本の駅弁キャンペーン「駅弁味の陣2020」にエントリー。御飯を鮭とイクラと、フキと海苔と柴漬けと玉子焼と、糸こんにゃくの明太子和えで覆う、鮭親子弁当。サケとイクラの駅弁など、北海道や東日本でありふれていて、一方で一ノ関との関連が乏しいようにも思えて、これは鮭の大きな大きなほぐし身が、味と見栄えで良い感じ。価格は2020年の発売時や購入時で1,100円、2022年時点で1,200円。
※2022年4月補訂:値上げを追記長方形の容器に、三陸の海の子を描いたのだろうか、掛紙をかけてひもで十字にしばる。中身は岩手県産ひとめぼれの味付飯の上を、ホタテ煮2個と蒸しウニ、イクラ、しそわかめ、錦糸卵で覆うもの。海の具がおいしく茶飯に合う。価格は2010年時点で1,000円、2014年時点で1,200円。2021年頃で終売か。
岩手県一関市は陸前・陸中・陸奥の「三陸」のうち陸中に属するが、内陸の工業都市であり、海岸は山を越えた向こう側にある。市名は一関だが、駅名は一ノ関。読みはどちらも「いちのせき」。駅名と地名の不一致は他にもいくつか見られるが、北海道を除きどちらかに合わせる気配がない。
※2023年4月補訂:終売を追記2011(平成23)年7月10日に購入した、一ノ関駅弁の掛紙。その絵柄も中身も風味も、上記の2020年のものと変わらない。当時の掛紙は容器に巻くのでなく、包むくらいの大きさがあった。この時は平泉の世界遺産への登録直後とあり、これを祝す紙帯も締めていた。
2002(平成14)年1月12日に購入した、一ノ関駅弁の掛紙。上記の2011年のものと、法定の表示を除き、まったく同じ。中身も値段も同じ。
2011(平成23)年の夏までに「がんばろう東北海鮮三色弁当」の名で発売か。発売当時はスリーブの商品名の右側に「がんばろう東北」の文字が入っていた。正八角形の容器に岩手県産ひとめぼれの御飯を敷き、半分をカニほぐし身とカニ脚肉、残る半分をイクラ醤油漬、残りを蒸しウニで覆う。同じ名前の商品が北海道の駅弁で、あるいは北海道の駅弁を名乗る催事商品で出ることもある、属地不詳な海鮮駅弁。イクラはともかくカニやウニは、内陸にある一ノ関でも駅弁としては名物になったことがある。調製元が2020年4月に休業のち廃業したため、この駅弁もなくなったはず。
※2020年12月補訂:終売を追記1963(昭和38)年に発売。駅弁の名前やカニを簡単に描いた掛紙を使用、長方形の容器に茶飯を詰め、ズワイガニやベニズワイガニのほぐし身や細い脚肉で覆い、揚げ物と漬物を添える。今となっては特徴の薄いカニ駅弁に見えるが、半世紀以上前からここにあると思えば違って見えてくるか。岩手県一関(地名には「ノ」が入らない)や東北本線一ノ関駅は、海の見えない北上川沿いの内陸であるが、ここの駅弁には当時から海のものがよく使われていたのだろう。調製元が2020年4月に休業のち廃業したため、この駅弁もなくなったはず。
※2020年12月補訂:終売を追記上記の駅弁「かにめし」の、2003(平成15)年時点での姿。主旨は特に変わらないが、駅弁の名前に「三陸」が含まれ、中身のおかずが少し多く、値段も110円安かった。
※2018年10月補訂:新版の収蔵による解説文の差し替え1980年代のものと思われる、昔の一ノ関駅弁の掛紙。20年後の「三陸かにめし」と、ロゴマークや調製情報など少々の差異はあるが、基本的に同じ絵柄である。小さい頃や若い頃に見たり食べたりしたものに、20年後にまた会えるというのは、駅弁の魅力のひとつであると思う。
駅弁誕生130周年を記念して、2015(平成27)年に発売された新作と思われる。中身はカニ脚とカニほぐし身が載るカニ丼と、茶飯と錦糸卵を合わせたイクラ丼。買った時点で最新の駅弁なのに、駅弁の名前も、中身の写真を置くだけの掛紙のデザインも、業務用錦糸卵やイクラも、カニの細かいフレークと細い脚も、着色料が流れ出る付合せも、苦味の後味も、前世紀の古いタイプの駅弁だと感じた。ここには他にもっと良い駅弁がある。価格は2015年の購入時で1,000円、2019年時点で1,100円。調製元が2020年4月に休業のち廃業したため、この駅弁もなくなったはず。
※2020年12月補訂:終売を追記2018(平成30)年8月17日に購入した、一ノ関駅弁の掛紙。上記の2015年のものと、絵柄も容器も中身もまったく同じで、その健在を確認できた。
釜石線でのSL列車「SL銀河」の運転開始を記念して、2014(平成26)年4月に発売か。ただし一ノ関駅に同列車は来ない。過去の一ノ関駅弁「三陸さんまかばやき弁当」と似ているのは名前だけに見える。掛紙にはSL銀河のロゴマークと、客車4両を従える列車編成イメージをデザインする。
長方形の容器に白飯を詰め、さんま蒲焼と錦糸卵で覆い、サンマ竜田揚、レンコンの挽肉挟み揚げ、枝豆と魚すり身揚げ、カボチャやニンジンなどの煮物、酢の物、香の物を添える。こういう魚の甘辛な蒲焼は、八戸駅に「いわし蒲焼風弁当」があったなど、駅弁では陸中の名物に思えた。2016年頃までの販売か。
上記の駅弁「平泉ふかひれ海鮮弁当」の、2011(平成23)年1月時点での姿。掛紙の絵柄がまったく異なるため新作だと思って購入したら、容器や中身や価格はまったく変わっていなかった。21世紀生まれの駅弁に似つかわしくない、昭和40年代風なデザインの掛紙であると思う。
JR東日本発足20周年記念駅弁の一ノ関駅斎藤松月堂版として、2007(平成19)年の夏頃に発売。黒い長方形の容器を輪ゴムで留め、なんとなくフカヒレ色の掛紙で包み、ひもで十字にしばる。中身は酢飯のイクラ丼とフカヒレ丼、茶飯のウニ丼とホタテ丼、小胡瓜と金時豆など。
同駅他社の20周年駅弁と対極的な薄味。メインのフカヒレが価格相応かどうかは分からないが、これが見て明らかに分かる分量と形状で入る駅弁はまずないので、少なくともイベント受けするだろうし、フカヒレなど滅多に食べない私達に感動を与えてくれる。2011年頃までの販売か。
県境を挟むが地理的にも鉄道路線でも一ノ関とつながりのある気仙沼は、サメの水揚げも日本一で、フカヒレの生産も同様。江戸時代末期から鮫のヒレの繊維フカヒレを中華料理の食材として出荷していたそうで、戦後は日本人も食べるようになり、近年は中国の経済成長でますます高級な食材になっているとされる。
※2016年10月補訂:終売を追記NRE東京支店アテンダント、つまり東北新幹線の車内販売員との共同企画により、2008年の初頭までに発売。長方形の黒い容器に、大船渡市碁石海岸穴通磯の写真を掲載した掛紙をかけて、ひもで十字にしばる。中身は白御飯の上をサンマのどす黒い蒲焼きで覆い、ニンジンとシイタケと玉こんにゃく、玉子焼と甘酢生姜と追加のタレを添えるもの。
甘辛でモリモリと食べられるお弁当に、なんとなく八戸駅の駅弁「いわし蒲焼風弁当」を思い出した。しかし今までは東北地方では珍しくNRE色のない駅弁販売駅であった一ノ関駅で、こういう企画の駅弁が登場してしまったことには危機感を覚える。2010年頃までの販売か。
※2017年5月補訂:終売を追記長方形の容器に、掛紙を兼ねて駅弁の名前とイクラの写真を印刷したボール紙のふたを載せて、紙ひもでしばる。中身は白御飯の上にイクラを敷き詰め、海苔と帆立と錦糸卵を載せるもの。写真ではイクラがぎっしりたっぷり載るように見えて、しかし実物ではそうでもなく、それでも食べてみると味は良いしイクラの分量が御飯等に本当に程良い感じ。価格も抑えられ、駅弁大会に出てくるあからさまなイクラぎっしり高額駅弁より、こちらが良い。2012年頃までの販売か。
※2017年5月補訂:終売を追記2001(平成13)年に発売か。平たい正方形の容器を大きめの掛紙で覆い海色の紙ひもでしばる。駅弁マークも特大版。中身は御飯に焼鮭に豚肉に玉子焼に煮物数点などと、銀杏で彩った磯の香り豊かな三陸産のアワビを甘辛煮を少量添えたもの。2010年頃か、それ以前までの販売か。
※2017年5月補訂:終売を追記JR東日本「大人の休日」キャンペーンに伴い、2002(平成14)年の春頃に発売か。上記の駅弁「三陸あわび弁当」の特上版として販売されている。購入時に売店係員から「中身はあまり変わらない」と案内されたが、それは掛紙のデザインだけ。漆塗り風の容器に雅なデザインの箸袋とお品書きが載り、ふたを開けると差異はさらに歴然、御飯は岩手県産ひとめぼれの茶飯にくるみが載り、焼き魚はハマチ照焼、豚肉はとろりとした角煮、煮物も味や形が良く、デザートのオレンジ付きという具合。メインのアワビだけが通常版と同じものだった。両者が併売されていたら、迷わずこちらを選択したい。2010年頃までの販売か。
1997(平成9)年1月1日17時の調製と思われる、昔の一ノ関駅弁の掛紙。JR東日本の「LOOK EAST」キャンペーンはすでに終わっていたと思うが、掛紙を刷りすぎたのだろう。調製元の名前とバーコードはシールで対応するが、調製印はスタンプが使われ、しかも完璧な位置に捺されている。