東京駅から新幹線で約1時間40分。名古屋市は愛知県の西部で伊勢湾に面する、人口約230万人の城下町。日本国内第三の大都市圏として、製造業や商業で大いに栄える。駅弁は改札外コンコースや新幹線改札内で3社約50種が積まれ、地元や近隣の弁当なども加えて、こちらも大いに栄える。1886(明治19)年3月1日開業、愛知県名古屋市中村区名駅1丁目。
2023(令和5)年10月1日から名古屋駅の売店「グランドキヨスク」「デリカステーション」各1店舗で一日計200個を販売。名古屋駅で人気のスイーツ「ぴよりん」がテーマの駅弁で、調製元は名古屋駅弁の松浦商店。楕円形の容器は鶏卵を、この容器を半分だけ覆うスリーブは卵の殻を、そこから顔を出す中身の一部はひよこを表すのだろう。スリーブの底面では中身の食材をかわいらしく描く。
この木質容器の半分に、ケチャップライスを敷いて玉子焼で覆い、チーズとタピオカでひよこの顔を描く。半分はおかずで、名古屋コーチンの鶏唐揚と鶏肉団子とゆで卵、エビフライ、たこ型ウインナー、ブロッコリー、花型にんじん、ぴよりん柄のキャンディ。このかわいらしい鶏肉駅弁は、朝8時の名古屋駅で奪い合われていた。ぴよりん人気、恐るべし。
ぴよりんは、ひよこの形をした洋生菓子。名古屋コーチンの卵を使ったプリンを、ババロアで包み、粉末状のスポンジで覆い、チョコで羽と鶏冠とくちばしと目を付ける。JR東海の子会社が名古屋駅で営業する店舗「カフェジャンシアーヌ」で、2011年7月に発売。かわいらしいスイーツとして一日に500個ほどが売れ続けていたところ、将棋の藤井聡太が2021年6月の王位戦で「ぴよりんアイス」を注文したことが新聞やネットで紹介されたことで、連日行列完売の大人気商品になった。調製元のジェイアール東海フードサービスは2024年2月に専用の工場を設けて増産するほか、こんな駅弁が出てきて存在を全国へアピールする。菓子の製造に7時間もかかるそうで、引き続き名古屋駅でのみ販売。
名古屋駅で人気の駅弁を、2024(令和6)年1月の京王百貨店の駅弁大会で実演販売。ただ、ぴよりんの神通力は東京に来られなかったのか、催事場で待つことなく買えた。スリーブと容器と価格は、上記の現地版と同じ。中身がやや異なり、ブロッコリーとにんじんがなく、手がチーズでなくソーセージであり、星形スティックに代えて京王百貨店のロゴマークの小旗を持たされた。
2021(令和3)年7月までに近鉄名古屋駅で発売か。2020年3月に近鉄の名阪甲特急で、近鉄名古屋駅と大阪難波駅を約2時間で結ぶ特急列車でデビューした80000系電車「ひのとり」にちなむお弁当。大阪難波駅では2020年8月に神戸駅弁の淡路屋が「名阪特急ひのとり弁当」を発売、こちらの調製元は名古屋駅弁の松浦商店なので、名阪の駅弁屋が同じ題材で駅弁を競演する。外箱の絵柄はいずれも特急電車「ひのとり」で、おそらく近畿日本鉄道から公式に提供されたCGだろうから、見た目はほぼ同じ。ふたを開けて食べ比べて、その違いに気が付くことになる。
こちらの中身は、白ご飯、とりごぼうご飯、名古屋寿屋の並焼売とエビ焼売とカニ焼売、ささみ梅しそ竜田揚げと梅ザーサイ棒棒鶏とヤンニョムチキンの「とりのおかず」、タケノコやしいたけなどの煮物、玉子巻、かまぼこ、ポテトサラダ、大根桜漬。名古屋に多い鶏駅弁に見えたり、あるいは車両愛称にちなみ大阪難波駅のものと同じくトリの中身としたものか。分量の多い、大型の駅弁。
昭和時代を通して新線建設と合併を繰り返し、分割民営化された国有鉄道を除き自社で全国最長の鉄道路線を持つ近畿日本鉄道。大阪へ名古屋へ伊勢志摩へ、京都へ奈良へ吉野へと広がる特急列車網は看板商品であり、その中でも名古屋と大阪を最小の停車駅で結ぶ毎時1本の特急列車は、その代表として歴代最新の特急電車が投入されてきた。近鉄特急の「ひのとり」や「アーバンライナー」「ビスタカー」などの名前は、列車名でなく車両愛称。全車指定席の特急券は、JRのように「のぞみ1号、新大阪まで」でなく、「13時発、名古屋まで」と買う。
2013(平成25)年に近鉄名古屋駅で、1,200円にて発売か。2013年3月に大阪難波駅や近鉄名古屋駅と賢島駅を結ぶ特急列車でデビューした、50000系電車「しまかぜ」にちなむお弁当。発売当時の「幕の内なごや」風の容器と内容に掛紙をかけたものを、2015年にこの内容へリニューアルし、2017年に掛紙を紙箱へ改めた。駅弁の名前は、食品表示で「しまかぜ弁当」、近鉄特急しまかぜのCGを載せた専用の紙箱では「特製幕の内しまかぜ」、おしながきでは「近鉄観光特急しまかぜ弁当」と読める。大阪難波駅では2015年までに「特製幕の内しまかぜ」が神戸駅弁の淡路屋の調製となり、こちらの調製元は名古屋駅弁の松浦商店なので、名阪の駅弁屋が同じ題材で駅弁を競演する。
中身は12区画のなんでもまるごと弁当で、日の丸、鶏五目、うなぎ、天むすで4種類もの御飯に、きしめんサラダ、八丁味噌のヒレカツ、ヤマイモ磯辺揚とレンコン天ぷら、根菜の煮物、さわら照焼と玉子巻、牛肉しぐれ煮、名古屋コーチン入り時雨煮とわさび菜おひたし、みかんとチェリーとこんにゃく餅。主に名古屋の食を、いろいろ詰め込んだ感じで、分量の多い大型の駅弁。価格は2015年時点で1,240円、2023年時点で1,350円。
「しまかぜ」は、20年に一度の伊勢神宮の式年遷宮が行われる2013年に向けて、当初は6両編成2本のみが製造された近鉄50000系特急電車の車両愛称。近鉄特急ネットワークを支える汎用品でなく、特急の利用が低迷する伊勢志摩観光のための専用品として、前面展望、個室座席、カフェ車両といった、他の路線や車両に展開しない設備を備えてデビューした。似た考え方で1994年にデビューした「伊勢志摩ライナー」と違い、今回は好評で翌年にはもう1編成を増備、10年後にもカフェの営業と伊勢志摩専用を続け、他の近鉄より値段が高い特急券を券売機では売らない別格の扱いで、大阪から名古屋から京都から観光客を運ぶ。
2022(令和4)年10月1日に名古屋駅で発売。名古屋テレビ放送が2012年から断続的に製作するテレビドラマ「名古屋行き最終列車」のお弁当。調製元とロケ弁当にはうるさいドラマスタッフが吟味を重ねたのだという。9区画の中身は専用の紙箱の表面と内面に記され、「味噌かつ」「エビフライ」「土手煮」「手羽先」「ひつまぶし」「とりめし」「天むす」「きしめん」「みそたま」となる。確かな「名古屋めしてんこ盛り」。茶色だらけの中身で、名古屋の食を過不足なく学習できる。価格は2022年の発売時で1,200円、2023年の購入時で1,300円。
2019(令和元)年の秋からスーパーの駅弁大会で売られるようになったらしい商品。同年5月に失われた美濃太田駅弁「松茸の釜飯」が、名古屋駅の駅弁屋に引き継がれたようで、早くも復刻販売となった模様。見た目は以前と区別が付かず、よく見ると掛紙に「松浦商店×向龍館」の記載が加わっている。陶製の釜飯容器に茶飯を詰め、松茸、鶏肉、タケノコ、ワラビを載せて、グリーンピースを散らしてさくらんぼを添えるのは、美濃太田駅の駅弁だった頃と同じ。名古屋駅で買えたという話は、まだ聞かれない。2022年秋冬の駅弁大会シーズンには、出てきていない模様。
※2023年4月補訂:現況を追記2016(平成28)年11月に名古屋駅で発売。それまでの「特撰名古屋」、2015年5月までの「特撰弁当名古屋」をリニューアル。ふたには商品名と中身と名古屋城を黄金色に描いた。4区画の中身は、名古屋コーチンの鶏飯、天むす2個としば漬け、あんかけパスタとみそかつとエビフライ、玉子焼と鶏照焼と根菜などの煮物。中身の半分に名古屋らしさを感じる、幕の内弁当の機能を持つ駅弁。価格は2016年の発売時で1,050円、2020年時点で1,080円、2022年1月27日から1,100円、2023年時点で1,180円。
※2023年10月補訂:写真を更新し解説文を手直し2020(令和2)年1月に阪神百貨店の駅弁大会で販売。西明石駅と日本を代表する人気駅弁「ひっぱりだこ飯」について、その発売20周年で2018(平成30)年8月に福岡版、翌9月に広島版が登場し、その第3弾に見えたがどうだろう。名古屋駅で売られたという話は聞いていない。見た目や内容や風味は、西明石駅弁とほとんど同じ。名古屋版ということで、掛紙に名古屋城を描き、中身にウナギ蒲焼の小片を加えた。名古屋駅で売られたかどうかは分からない。
2019(令和元)年の5月までに発売か。市販の大きな惣菜弁当向けボール紙製容器に、鶏飯とゆかりごはんの俵飯を4個ずつと、名古屋駅前の柳橋中央市場で玉子焼の名店である柳橋右大臣を名乗るきな玉子焼、きんぴらごぼうと春雨サラダ、松阪牛100%使用というコロッケとソース、サトイモやシイタケなどの煮物、ポテトサラダと黄桃とチェリーを詰める。量の多さと脈絡のない内容が個性的。御飯のおかずに困る印象はある。1年弱の販売か。
※2021年3月補訂:終売を追記2015(平成27)年5月28日のリニューアル。従前は「特撰弁当名古屋」という、東京・名古屋・京都・新大阪の各駅別に設定した季節の幕の内弁当であったが、名古屋以外のものは消えた。名古屋城天守閣の写真を使う派手な絵柄のボール紙ふたにリストを書くとおり、中身はみそかつ、鶏おにぎり、牛うま煮、エビフライ、天むす、ういろうなど。東京の人が期待する名古屋を、一覧としてしっかり押さえた。2016年11月に「なごや満載」へリニューアル。
※2017年5月補訂:改称を追記2011(平成23)年10月までに商品化された、三重県立相可高等学校村林新吾先生監修のお弁当。同年10月8〜10日に東京駅で開催された「第14回東日本縦断駅弁大会」で、名古屋駅の駅弁として販売されていたもの。
正八角形の黒い発泡材製容器をラップで密封し、商品名や中身のイラストなどを記した紙帯を巻く。4区画の中身はそれぞれ、桜でんぶで桜色になったちらし寿司という名の握り飯、ひつまぶし風うなぎめし、味噌だれロースカツとおからときんぴらごぼう、玉子焼きと鶏つくねと根菜類の煮物など。
生まれと味と雰囲気はなかなか良いぞと思いきや、ライター望月氏の駅弁収穫報告ブログにより、当館用語でいう疑義駅弁であることが見破られた(http://ameblo.jp/ekiben-e-kibun/entry-11021171280.html)。JRの100%子会社が偽駅弁を駅構内に持ち込んで、何が東日本縦断なのか、何が東北応援なのか。NREは真っ当な東京の駅弁屋でもあるし、本物の駅弁も来ているため大会への訪問は続けるが、催事屋ばりの阿漕な商売は即刻やめてもらいたいものだ。
三重県立相可(おうか)高等学校は、三重県多気郡多気町にある全日制の高等学校。ここの食物調理科あるいは食物調理クラブでは2002年から、多気町立の農業公園「五桂池ふるさと村」内で休日にのみ営業するレストラン「まごの店」を運営しているそうな。これを全国唯一の現役高校生が運営するレストランとして村林新吾先生が著書にして、その内容をモデルに「高校生レストラン」としてテレビドラマ化され、2011年5月から7月までに日本テレビ系列で放送された。
この「駅弁」は、疑義駅弁大会の後に鉄道駅へ来ることはなかった模様。農林水産省の補助事業で三重県多気町にできた農業公園「五桂池ふるさと村」内の、相可高等学校の食物調理クラブが運営する食堂「まごの店」で、2015年頃まで販売された模様。
※2019年8月補訂:終売と後日談を追記2010(平成22)年4月1日に発売。中身のイメージ写真を印刷した専用のボール紙箱に、レタスとタマゴのサンド、タルタルソースの海老カツサンド、味噌だれのトンカツサンド、蒸し鶏のオニオンソース和えとミニトマトのサンド、クルトンとミニトマトのツナサラダを収めるもの。少量で高価だと思うが、野菜の新鮮な色彩が清々しいし、箱も含めて見栄えがする。
容器の右上にロゴマークが付く「のぞみ畑」とは、JR東海の常滑農場で栽培した野菜を使う商品群のブランドネーム。本商品他の駅売りサンドの他に、デパ地下やホテルのレストランでのサラダ、野菜そのものの販売でも提供される。
企業の参入を阻止してきた農業関連法制の緩和への期待や、2007年末の冷凍餃子中毒事件以降の中国産食品に対する不安の増大などからか、2008年の秋にJR東日本とJR東海が相次いで農業ビジネスへの参入を表明、翌年には農協との合弁ないし子会社を通して野菜の生産を始めた。JR各社には新潟のスッポンから函館のダチョウやカリフォルニアの米まで、第一次産業への進出がことごとく失敗している過去があるのだが、はたして今回はうまくいくのだろうか。2017年時点で、のぞみ畑は健在だが、このような箱入りサンドイッチの販売は終了した模様。
※2017年5月補訂:終売を追記名古屋駅弁「お料理弁当」の、2010(平成22)年時点での姿。駅弁の名前と調製元は確かに同じだが、まったく別のものに生まれ変わっている。竹皮製の長方形の容器に名古屋城と商品名などを印刷した掛紙を巻く。赤いトレーで6区画に分けられた中身は、みそかつ丼、ひつまぶし、天むす、シイタケやタケノコなどの煮物、鶏つくね串と昆布巻き、きしめんサラダと玉子焼とかまぼこ。丼などと言っても、分量は大きな一口サイズ程度であるが、名古屋らしさが細々と詰まってはいる。2016年までの販売か。
※2017年5月補訂:終売を追記極彩柄の正八角形の容器を二段重ねにして、和紙風の紙袋に収納する。中身は下段が栗おこわ、上段が焼サワラ、穴子八幡焼、チキンロール、昆布巻、玉子焼、蒲鉾、海老、昆布巻、タケノコや里芋などの煮物など。
容器を除き高級感と高品質にあふれる、新幹線グリーン車リピーター御用達の重役弁当か、二度とない大切な旅のお弁当。しかし駅弁は鉄道の切符と同様、お金を積めば誰にでも売ってくれるし、平等にキヨスクのビニール袋に入れてくれる。2008年7月限りで終売。
※2009年3月補訂:終売を追記名古屋駅の普通駅弁。黒い9区画プラ製トレーを入れた正方形のふた付きボール紙容器を赤い紙帯で留める。中身はひつまぶし風鰻重、天むす風海苔巻、きしめんサラダ、鶏飯、みそカツ、ういろうなど。名古屋を主張する内容で、価格なりの風味と品質がある。パッケージには名古屋の絵柄も駅弁マークも入らないが、代わりに愛知万博JR東海リニア館のマークが入っていた。
名古屋のJRCPの、季節のお弁当。小さな経木枠の長方形の容器に枠付きの紙のふたをかける。中身は駅弁の名前そのままの松茸御飯、エンドウマメと紅葉型人参に彩られて、50×20×2mm程度と駅弁にしては大きい松茸が6切れも御飯の上に載り、松茸の味と香りがいつまでも口の中に残る。
これで千円で済むのだから、松茸の産地は中国か北朝鮮なのだろうが、国産を珍重するあまり価格を高騰させ利権や紛争を生むよりは、外国産品も尊重して平和に秋の味覚を味わえるほうが良いと思うし、早く椎茸や舞茸のように栽培技術が確立しないかなとも思う。現存しない模様。
※2020年6月補訂:終売を追記2009(平成21)年に使われたのではないかと思われる、名古屋駅弁のふた。紀勢本線の全通50周年を記念するキャンペーンの一環として、調製元と三重県立相可高等学校調理クラブとの共同開発で、同年4〜9月に名古屋駅と特急列車「南紀」の車内販売で売られた記念駅弁。山と海のもの、ひじきの混ぜ御飯に牛すき煮、玉子焼、かまぼこ、きんとんあんころ、煮物を詰めたという。現物で不明な価格は900円で、調製元はジェイアール東海パッセンジャーズ。
1982(昭和57)年8月23日16時の調製と思われる、昔の名古屋駅弁の掛紙。下記のとおり、絵柄は10年くらい変わらないが、価格が上がったり、国鉄のキャンペーンのアイコンが変わったり、ここでは調製元が仮営業所に移転するなどの変化はある。
昭和50年代のものと思われる、昔の名古屋駅弁の掛紙。価格帯の低い駅弁用だったのか、単色刷のシンプルで、しかし当時の国鉄の旅行キャンペーン「いい日旅立ち」のマークはしっかり入っている。
1970年代後半頃の調製と思われる、昔の名古屋駅弁の掛紙。価格帯の低い駅弁用だったのか、単色刷のシンプルで、しかし当時の国鉄の旅行キャンペーン「一枚のキップから」のマークはしっかり入っている。
JR名古屋駅の東隣の地下に位置。大阪と奈良を複線電化の路線で結んだ大阪電気軌道が、奈良盆地から伊勢へ名古屋へと勢力を拡張する過程で、名古屋鉄道と組んで国鉄駅前の地下に駅を設け、伊勢や大阪を行き先に掲げた電車を走らせた。駅弁は昭和時代から近鉄の子会社や他社のものがあったようで、2023年時点でJR名古屋駅の駅弁屋が近鉄名古屋駅向けに調製する駅弁が駅のコンビニで売られる。1938(昭和13)年6月26日開業、名古屋市中村区名駅一丁目。