駅弁の容器は、駅弁の個性のひとつであり、時には駅弁の特徴でもあります。その形状や材質には様々なものがあり、駅弁でない弁当にはまず見られないものもあります。
プラスティック製(プラ製)の容器は、駅弁では最も多く使われています。駅弁でない弁当でも、容器のほとんどはプラ製です。衛生的、軽量、安価、素材や形状により耐水性や耐油性に優れるなどの特徴で、昭和時代に木の折箱や紙の包装などを置き換えていきました。ふたや底面を紙製とするものもあります。容器は原則として使い捨てとなります。
写真:武雄温泉駅「佐賀牛すき焼き弁当」
上記と同じくプラスティック製(プラ製)の容器ですが、特徴的な形状を持ち、比較的頑丈で、弁当や小物入れなどに再利用できるタイプの容器は、人気の駅弁や個性的な駅弁、スーパーやデパートの駅弁大会で売られる駅弁に、よく使われています。
写真:高崎駅「だるま弁当」
紙製の容器も、一部の駅弁で使われています。軽量、やや安価、おそらく製造や廃棄における環境への負荷がプラ製より小さいなどの特徴で、新作の駅弁を含めて時々見掛けます。強度や耐水性や耐油性を確保する場合、中身をプラ製のトレーに収めたり、表面加工や組み立てに工夫を凝らしています。また、プラ容器を収める箱やスリーブには、紙がよく使われます。容器は使い捨てとなります。
写真:八戸駅「金の輝き特製うに重」
木の薄い板を組み立てた容器は、弁当の容器として江戸時代やそれ以前から使用され、「経木折」(きょうぎおり)という言葉もあり、古くはほぼすべての駅弁で使われていました。昭和時代の中期以降、駅弁の容器はプラ製に置き換わり、今では木の容器を使う駅弁はほとんどありません。衛生管理が難しくコストが高い経木折は、こだわりの駅弁屋のみが使える容器です。素材が水分を吸ったり調整することから、作り置きを常温でいただく弁当の風味を保つうえで、最良の容器だと評価されます。プラ製の容器の、白飯の区画に経木を敷く駅弁もあります。容器は使い捨てとなります。
写真:横浜駅「シウマイ御弁當(シウマイ弁当)」
ごくまれに、約10年に一度くらい、使い捨てでない木の容器を使う駅弁が販売されます。高額な駅弁とイベント向け駅弁に限られ、普段買えることはまずありません。木製なので手入れが大変ですが、弁当箱や物入れとして利用することもできます。
写真:東武日光駅「日光埋蔵金弁当」
陶器を容器とする駅弁があります。有史以前から人類に調理器具や食器として利用されたと考えられる、土を高温で焼き固めた容器は、鉄道でもお茶の容器として明治時代から利用されており、1958(昭和33)年に横川駅で発売された駅弁「峠の釜めし」が人気になったことで、駅弁の容器としても全国各地に広まりました。しかし保温という特徴は弁当の衛生管理上好ましいものではなく、高価で重たく廃棄が困難であり、鉄道会社から使用をとがめられるなど、駅で売られる弁当には使われない傾向にあります。再利用はできますが、弁当の容器としては使いにくいと思います。
写真:横川駅「峠の釜めし」
陶器より硬質で吸水性のない磁器を容器とする駅弁もあります。容器の美しさから、中身よりもむしろ器を売りにする駅弁にのみ使われると思います。高価で重たく割れやすく、廃棄が困難であり、弁当の容器として適したものではありません。普段使いの食器としては、とても便利に利用できます。
写真:有田駅「有田焼カレー」
木や竹の薄板や竹皮などを編んだ容器が、商材として市販されており、これを駅弁の容器としたものがあります。軽くて見栄えに風情があり、おそらく製造や廃棄における環境への負荷が小さい特徴があります。強度が小さく変型に弱そうなので、中身をプラ製や紙製の容器に収めたり、手作りや手売りができる販売規模の小さい駅弁で使われています。
写真:嘉例川駅「百年の旅物語かれい川」
形のある容器を使わずに、中身を笹の葉や竹皮などで包む駅弁があります。全国初の駅弁が握り飯2個とタクアンを竹の皮で包んだものだという説があるように、葉や皮あるいは紙は、食品の包装として使われることがあります。このような駅弁は、ほぼ現存していません。
写真:高知駅「鯖の姿ずし」